分水嶺

 何か、恐ろしささえ感じた。中日ドラゴンズ対北海道日本ハムファイターズの日本シリーズ第3戦をテレビで見た。偶々、1回の表裏から見る事が出来、その攻防で中日ドラゴンズに恐ろしさを感じた。

 中日の先発は朝倉健太。その朝倉は、1番森本稀哲を遊ゴロに仕留めるものの、2番田中賢介に二塁内野安打を打たれる。そして、3番稲葉篤紀を迎える。その稲葉を二ゴロ併殺に切って取り、1回表の北海道日本ハムの攻撃を3人で終わらせる。そして、迎えた1回裏の中日の攻撃。1番の荒木雅博が足許への死球で出塁。2番の井端弘和の打席で荒木が二塁盗塁を決める。確か、2球目だったと思う。ヒットエンドランと言う形では無かった様に記憶している。この盗塁を見て、「落合博満監督は、ここに賭けているな」と思った。井端は右飛に倒れるものの、3番森野将彦が四球でつなぎ、4番タイロン・ウッズが中前適時安打を放って中日が先制する。このタイロン・ウッズからの5連打を含む、7安打で7点を奪う。

 この様に言うと「馬鹿じゃないの?」と言われそうだが、中村紀洋以降のヒットはオマケと言う感じだった。何よりも、荒木の『仕掛け』に恐ろしさを感じた。北海道日本ハムの先発は、左腕の武田勝。一塁牽制が上手い方なのかを知らないが、一般的に、左投手はクイックモーションはさておき、一塁牽制は上手い人が多い。その中での盗塁だったから、恐ろしさを感じた。ヒットエンドランなら、「この2人(=荒木雅博と井端弘和)では当たり前」と言う感じがする。しかし、単独盗塁になると、幾ら、荒木が今季のセリーグの盗塁王を獲得したと言っても、意外感、奇襲感が伴う。これで、北海道日本ハムバッテリーが混乱に陥ったのではないかと思う。そこを引っ叩いたのが、中村紀洋以降の連打だと思う。勿論、相手の混乱に乗じたこれらの選手の打撃も素晴らしいと言わなくてはならないけど(笑)。

 勝負には分水嶺と呼ばれるポイントがある。シリーズでの分水嶺が、第3戦=ナゴヤドームでの初戦=にあると考えていた。日曜日の試合が終わった後に書いておけば良かったのだが、第2戦の勝利監督インタビューで、落合博満監督の表情の冴えないのがとても気になっていた。私の勝手な思い込みだと思うが、何処か上の空で答えている様に見えた。もしかしたら、この第3戦の重さを感じており、第2戦の勝利を取った喜びよりも、第3戦で勝利を取る為の方策に意識を傾けていたのかもしれない。落合監督が選手たちに「第3戦の1回を何としても取るからな」と意思を伝えたのかどうかは知らないが、まるで、その様なことがあったかの様な攻めであった。

 ここに追い打ちをかけたのが、2回の守備。4番フェルナンド・セギノールが右翼線二塁打で出塁し、5番工藤隆人の左中間二塁打で北海道日本ハムが1点を返す。高橋信二の遊ゴロで工藤が三塁へ進む。一死三塁で7番稲田直人を迎える。この稲田が遊撃手へのゴロを打つ。打球を捕った井端は、迷わず本塁へ送球し、俊足の工藤を本塁で刺した。極端な前身守備ではなかったと思うが、それでも、本塁で刺した。ここにも「仕掛け」を感じた。2点目をくれてやって、二死走者なしで8番金子誠を迎えても良かった。それを、2点目をくれてやって一死一塁で金子を迎える可能性もあった。実際、この金子が右翼前安打を放っている。2点が入った状態で、更に一死一塁二塁、又は三塁なら、9番の投手の建山義紀のところに代打を出して勝負に出られた。しかし、実際は、二死一塁二塁。少しでも点を返しておきたいとは言え、この時点で投手を2人使って、残りが8回(9回までに同点に負い付く事を条件にして)。一死なら代打と後ろの森本稀哲の2人で得点を取りにいけるが、二死だと代打のみでそれを考えなければならない。継投が苦しくなって、更に点が入らないでは大変な事になる。外国人監督であるトレイ・ヒルマンでもそれを気にしたようで、ここで代打を送らなかった。結果としては、これで北海道日本ハムの流れを断ち切って、裏の追加点でそれを決定的なものとした。

 3回以降、どちらにも攻撃の好機は無かった。簡単に言えば、試合が落ち着いてしまった。だが、この落ち着きは明らかに中日をシリーズで有利に持っていくものだったと思う。先制パンチを食らわして流れを持ってきた中日は、かなり楽な状態で第3戦を終えたと思う。一方、北海道日本ハムは、第4戦以降に力を温存するにはこの試合での反撃の手を緩めなければならず、同様に、守備や継投でもその様にしなければならなかった。北海道日本ハムがそれらの手を選択すれば、中日はもっと楽になっていく。分水嶺を取った上に余力も残る。これで怖いのは慢心だけだが、元来の勝負師である落合博満とその選手たちが慢心に陥る事は先ずないと思う。この『大きな流れ』を取るのが第3戦の重みであり、そこに勝負を賭けてきた中日に恐ろしさを感じたのである。勘に過ぎないが、これで中日の53年ぶりの日本一が決まった様な気がする。仮に、そうならなかったとしても、この第3戦の1回裏の攻撃は『勝負師落合博満』が日本一になる為に打った一手とは言える。


【補足の蛇足】
 打てないと言われている北海道日本ハムの攻撃陣の成績を調べてみた。確かに、5番以降を務めると思われる打者の成績が中日に比べると大きく落ちる。しかし、1番から4番までの成績は、決して見劣りのするものではない。その中で、鍵を握りそうなのが、2番の田中賢介二塁手だと思う。今季の彼は、パリーグ記録となる58犠打を決めている。森本稀哲と共に全試合に出場し、3番稲葉篤紀、4番フェルナンド・セギノールへのつなぎ役を果たしていた。北海道日本ハムの得点傾向を知らないが、序盤にこの1番から4番のつながりで得点をして、強力な投手陣で逃げ切る、と言うのが今季の北海道日本ハムの戦い方ではないかと思う。実際、第1戦の得点の仕方はこれであった。しかし、第2戦以降(第1戦でもそうだったが)、田中賢介に当たりが出ていない。1‐6とされた第2戦の6回裏に森本が遊撃への内野安打で出塁して無死一塁で第3打席を迎えた。この時に、何の策もなく彼は凡退している。この時に「田中賢介に仕事をした手ごたえを持たせる為に、犠打を命じろ」と思っていた。彼に聞いていないから私の推測に過ぎないが、これで彼は『手ごたえ』を得る事無く、ここまでを過ごしている。得点があまり入っていない事、得点パターンが森本、自身(田中賢介)、稲葉、セギノールの4人のつながりである事から、彼は責任を感じているに違いない。ここに自身に仕事をした手ごたえがなければ、もっとそれを強く感じてしまい、迷宮に迷い込むであろう。こうなったら、彼を立ち直らせるのは難しい。ただ、第3戦の第1打席で「良い感じの内野安打」を打っている。そこが「希望の光」となるか…。色々と言われているであろう稲葉篤紀は、これの余波を受けているに過ぎない、と思う。

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