かくも濃厚な8回裏の攻防…

 昨日(10月16日)のパシフィックリーグのクライマックスシリーズ第4戦は面白かった。千葉ロッテマリーンズが取って2勝2敗のタイに戻した訳だが、その様な『結果』の話よりも、試合の『内容』の方が見ごたえがあった。

 特に惹かれたのは、8回裏の攻防だった。この時点でスコアは1‐2でビジターチームの千葉ロッテの1点リード。その千葉ロッテは、マウンドに中継の薮田安彦を送る。北海道日本ハムの攻撃は、2番田中賢介二塁手から。その田中は一塁へゴロを放つ。そのゴロを千葉ロッテの一塁手、福浦和也が好捕。ベースカバーに入ろうとしていた薮田を制して自分で一塁へ入る。しかし、これがセーフの判定で田中の一塁内野安打となる。薮田のベースカバーが遅れた訳ではなく、福浦が動きの良さを見せて制したものだった。そして、田中の足の方が福浦の足よりも一瞬早く着いたに過ぎない。どちらも、『出来る限りのプレー』をした結果ではあった。

 とは言え、1点を追いかける北海道日本ハムにとってはその足掛かりとなる走者が出た。続く打者は3番稲葉篤紀右翼手。パシフィックリーグ首位打者の登場である。この稲葉は四球で無死一塁二塁となる。迎える打者は、4番フェルナンド・セギノール。前日の試合で好感触を掴んでいる。本調子ではなさそうではあるが、それなりに怖い相手。しかし、ここは薮田が気魄の投球を見せて、外角中央の直球でまともなスイングをさせずに三振を取った。5番高橋慎二捕手は、外角中央の直球に押されて薮田へのゴロを打つ。打球を捕った薮田は振り返って二塁へ送球しようとする。しかし、TSUYOSHI(西岡剛)遊撃手とホセ・オーティズ二塁手が見合ってしまい、結果、オーティズ二塁手のベースカバーが遅れて二塁封殺のみとなる(所謂、ゲッツー崩れ)。これで、二死一塁三塁となった。

 千葉ロッテには嫌な流れ、北海道日本ハムにとっては九死に一生と言う感じでこの回が続く。ここで迎える打者は、6番工藤隆人左翼手。足が速い事で有名な選手で、長打は無いが、打ち取ったと思われる内野ゴロがヒットになる確率の低くない選手である。ここで薮田、里崎のバッテリーは、「三振かフライを打ち取る配球」を選択する。具体的には、外角高目の直球で押した。実際、薮田は初球に外角中央の直球を投げている。これを工藤が三塁側へファールを打った。ここで、北海道日本ハムのヒルマン監督が動いた。一塁に居た高橋信二捕手に川島慶三外野手を代走に送る。この駆け引きが面白かった。

 このタイミングで代走を送ったのは、説明が付く。千葉ロッテ側は、工藤隆人左翼手の『足』を恐れた。その事自体は、工藤が打席に入った時点でヒルマン監督にも想像の付く事であろう。しかし、確信は持てない。ところが、薮田が初球に外角の決して低くないところへ直球を投じた。これを見て、ヒルマン監督は「千葉ロッテのバッテリーが『勝利』を近付ける為に『工藤の足』の方を封じる手を取ってきた」と確信したに違いない。千葉ロッテは、この試合を落とすとそれで話が終わる。だから、どうしても工藤を打ち取りたい。その為に考えられるのは、非力な工藤に打ち上げさせる配球をする事。とは言え、薮田は低目へのコントロールも悪くなく、チェンジアップとフォークボールも持っている。三振を取りに行くなら、無理に高目の直球で勝負をしなくても良い。ただ、この日の薮田はチェンジアップを投じて稲葉に四球を与えている。4番のセギノールも、カウントを整える為にはチェンジアップを使っているが、決め球には使っていない。この事は、この日の薮田がチェンジアップやフォークボールをウィニングショットに使うには自信のない事を物語っている。ただ、工藤に対して投げる前に決め付けるのは危ない。だから、1球見てバッテリーの考えを確認して代走を送った。結果、工藤が薮田の直球に付いていけず空振りの三振に終わったが、とても見ごたえのある采配だったと思う。

 私の推測が当たっているとは思わないが、とりあえず、この様な説明が付く。当たり前なのだが、相手の様子を見て考えを見ようとし、それに応じた手を打つ。そんな采配が久し振りに見られた。日本の場合、割りと『通り一遍』の采配しか見られない。勿論、その采配に意味はあるのだが、「場を見て」と言うよりは、「こう言う場合はこれだろう」みたいな手が多い。この試合のヒルマン監督の様な『勝負師』の様な手はあまり見られない。こう言っては北海道日本ハムファンに失礼だが、あの『手駒』で2年連続パシフィック・リーグ優勝を成し遂げた監督の手腕は高いと言わざるを得ないだろう。そして、余計なお世話だが、この監督とその監督の作戦に応じられる選手を構成したゼネラルマネージャーが居なくなる来季は、正直、明るいものではないだろう。これは蛇足な話だけど(苦笑)。何にしても、実に濃厚な8回裏の攻防であった。来季の北海道日本ハムでも見られると良いのだが…。


【補足の蛇足】
 ヒルマン監督ばかりを褒めるのもバランスを欠くので、千葉ロッテのバレンタイン監督にも触れておく。この試合の千葉ロッテの投手は、小野晋吾だった。登板間隔からすると、今季、16勝を上げた成瀬善久でも良かった試合。でも、バレンタイン監督は、小野を選択した。理由は良く分からないが、一部の報道を見ると「ボビー流のローテーション」によるそうだ。確かに、バレンタイン監督には強烈な選手配置の意志がある。今季の千葉ロッテは、清水直行、小林宏之、渡辺俊介、成瀬善久、小野晋吾、久保康友の6人で先発ローテーションを組んだ。登板数が25、25、25、24、22、21と言うのが、全くそれを崩さなかった事を物語っている。このクライマックスシリーズでも、福岡ソフトバンク戦の初戦が渡辺俊介、第2戦が小林宏之、第3戦が成瀬善久、間を置いた北海道日本ハム戦も、初戦が久保康友、第2戦が小林宏之、第3戦が渡辺俊介、と登板させた。流石に、短期決戦で6人の先発を用意する必要は無いので、不調のエース、清水直行は登板させず、渡辺俊介、小林宏之、成瀬善久を中心に空いた部分に久保康友か小野晋吾を入れていく、と言う作戦を用いている。そこに拘っただけとは言い切れないが、その様なものは見えてくる。勿論、別の説明も付く。仮に第4戦を成瀬善久で取ったとして、出来上がった第5戦でダルビッシュ有の相手をするのが小野晋吾と言うのは、正直、厳しいだろう。それなら、まだ相手の投手の格と質の落ちる、第4戦に小野晋吾を当てた方がまだマシとも言える。まあ、外野からは『危険な賭け』に見えるだろう。でも、バレンタイン監督には『当然の手』であったのかもしれない。

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この記事へのコメント

とうきび
2007年10月17日 22:03
どもども。

昨日の試合は我が北海道日本ハムが再三チャンスを作りながら「あと一本」が出なかったのが直接の敗因ですが、武田勝が前回対戦した時と同じ里崎に再びホームランを打たれたのが最も痛かったですね。

仰るとおり、12球団最低の打線でリーグ優勝(連覇)に導いたわけですから、ヒルマン監督の手腕は素晴らしい。
しかし、来年は居なくなるのでホント痛いですよ。おまけに高田GMまでも…(苦笑)
来年は梨田監督になるそうですが…かつて彼が指揮を執った近鉄時代のいてまえ打線とは180度違いますからね。来年は今年以上に不安要素が大きいです。

・・・続く
とうきび
2007年10月17日 22:04
・・・そんな先の事より、まず明日の試合ですね。
成瀬善久投手には0勝4敗と苦手としておりますが、明日の試合もいつものように自慢の機動力(笑)で相手を揺さぶって点をとりにいく試合運びをするでしょう。
しかし、それでも点が取れないことは予め覚悟しないといけないので、明日先発のダルビッシュには完封を狙うぐらいの意気込みで試合に臨んで欲しいですね。何しろ「引き分け」でも日本シリーズへ進出できますからね…かなり消極的な考えですが(笑)

何はともあれ、観戦レポート有り難う御座いました!!!!!
明日もよろしくお願いします☆
2007年10月18日 21:12
どうもです。

偶々、中継を見ていて「面白いものが見られた」と思ったから取り上げてみたまでです(笑)。第5戦は、最後の場面ぐらいしか見ていないので何も書けません(苦笑)。とりあえず、日本シリーズ進出、おめでとうございます。

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